ピーター・ワトキンス監督作『懲罰大陸★USA』


日本では『傷だらけのアイドル』(67年)で知られる、BBC出身のイギリスの映像作家、偽ドキュメンタリーの巨匠、ピーター・ワトキンスの超問題作が40年以上の時を経て遂に日本初上陸。ワトキンス監督がアシスタントとして参加した、世界的に疑似ドキュメントの傑作と評されている歴史改変SF戦争映画『イギリスは占領された!?』(64年/監督:ケヴィン・ブラウンロー/トニー・リチャードソンが出資)同様、強烈なインパクトを放つ作品であり、けっして気分の良くなるエンタテインメント作品ではない。
1970年、ベトナム反戦運動の激化を背景に、ニクソン大統領はマッカラン国内治安維持法を発令、アメリカ政府は反政府的・危険分子とみなした者たちを一方的に拘束している。州刑務所および連邦刑務所の収容キャパシティが超える中、拘束された者たちは一方的な裁判にかけられ、二者択一の選択を迫られる。求刑通りの懲役を全うするか、カリフォルニアにある「ベアーマウンテン国立お仕置公園」にて人間狩りの標的として3日間を過ごすか-。

ワトキンス監督は70年のオハイオ州ケント大学での州兵によるベトナム反戦デモ学生射殺事件をきっかけに、フェイクドキュメンタリーのスタイルで本作を製作、カリフォルニアのエルミラージュ・ドライレイクにてほぼ素人のキャストと最小限のクルーによって撮影された。製作費は95,000ドル。内容はすべてフィクションであり、ワトキンス監督の目的は本作によって人々に問題意識や関心を持ってもらい、ポジティヴで活発な議論を促すことだった(はず)。しかし作品は国家への批判と受け取られ、徹底的にネガティヴにとらえられた。カンヌ映画祭を経てニューヨークでの公開時には、そのあまりの衝撃的内容により米国メディアが即反応、総攻撃を浴びた。劇場は4日間で公開を打切った。本作のテレビ放送を一度検討したハリウッドのテレビプロデューサーは「本作を放送すれば5分で国家権力が乗り込んでくる」と発言、またPBS主催のセミナーに参加した全米のテレビ局の面々は「どんなことがあっても本作をアメリカのテレビで放送出来ることはない。永遠に放送しない」とコメント。その言葉通り、いままで一度も放送されていない。

なお、ワトキンス監督は本作以前の65年に、イギリス本土にソ連の核ミサイルが落とされた、という設定で、疑似ドキュメンタリーの手法を用いて制作された衝撃作『TheWarGame』を発表している。この作品はフィクションにもかかわらず何故かアカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞を受賞してしまい、アカデミーは以後この部門のルールを変えている。フィクション作品で同賞を受賞している作品は歴史上この作品のみである。
脚本・監督:ピーター・ワトキンス<傷だらけのアイドル』(67)『ムンク・愛のレクイエム』(76)>/ 製作:スーザン・マーティン<『ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実』(74)>/ 音楽:ポール・モーシャン/ サウンドミックス:ヒロキ・ヤモト、ウェイン・ナカツ/ 撮影:ジョーン・チャーチル<『ギミー・シェルター』(70)>/ 撮影補佐:ピーター・スモークラー<『ギミー・シェルター』(70)>、リチャード・ウェルズ/ 美術:デヴィッド・ハンコック/ 編集:ピーター・ワトキンス、テリー・ホーデル
裁判での被告人(矯正集団638):パトリック・ボランド、ケント・フォアマン、カルメン・アルゲンジャノ、ルーク・ジョンソン、キャサリン・クイットナー、スコット・ターナー、スタン・アームステッド、メアリー・エレン・クラインホール/ 裁判での審判長:マーク・キーツ/ 裁判でのメンバー:グラディス・ゴールデン、サンフォード・ゴールデン、ジョージ・グレゴリー、ノーマン・シンクレア、シグムンド・リッチ、ポール・ローゼンスタイン/ 連邦捜査員:リー・マークス/ 速記者:サンディ・コックス/ 被告側弁護士:フレドリック・フランクリン/ 裁判ドクター:ロス・ブリーグレブ/ 連邦執行官チーフ:ジョー・ハジンズ/ 連邦執行官:ロジャー・グリーン、トム・ケンプ、ハリー・マッカッソン/ 砂漠での被告(矯正集団637)(闘うものたち):ハロルド・ボールー、シンシア・ジェンキンス、ジャック・ロンドン、ロブ・ルワイン/ 砂漠での被告(矯正集団637)(少し闘うものたち):ローランド・ゴンザレス、ヴィオラ・ゴンザレス、ジャック・ゴズジック、ブライアン・ハート、リンダ・マンデル、ドン・ピノ、ジェイソン・ソマーズ、コンチータ・ソーントン/ 砂漠での被告(矯正集団637)(平和主義者たち):ゲイリー・ジョンソン、ミシェル・ジョンソン、テッド・マーティン、ドン・マクドナルド、ハロルド・シュナイダー/ 保安官:ジム・ボーワン/ 保安局員:ヴァル・ダニエル/ 保安局員:ヴァル・ダニエル、ハーラン・グリーン、デニス・ウィルソン/ 市警察:ポール・アレルインズ、ケリー・キャノン、ボブ・フランクリン、ブルース・マグワイア、ロン・ペニントン、アレン・パウエル、ジム・ウェッツスタイン/ 州兵:ジム・チャーチル、ダニー・コンロン、ワリー・マッケイ、クリフ・ピナード、ドン・ヴァン、チャーリー・ワイアット/
リアルな虚構が浮かび上がらせる戦争をしたい国の醜悪なる恐怖。強烈過ぎるメッセージが今なお鋭利な反戦&反権力映画の金字塔。 この単刀直入な過激さは、今の日本に、絶対に刺さるハズだ!
                 江戸木純(映画評論家)
『ウォー・ゲーム』(65年)でなんとアカデミー最優秀ドキュメンタリー賞を受賞してしまった「偽」ドキュメンタリーの鬼才ピーター・ワトキンス。『懲罰大陸USA』(71年)は、『バトル・ロワイヤル』や『ハンガー・ゲーム』に20年以上先駆け、M.I.A.のビデオ『ボーン・フリー』にも大きな影響を与えた地獄のサバイバル合宿だ。
                 町山智浩(映画評論家)
こっ、これは……“若松プロ★USA”? もしくは政治の季節のサバイバル系YA〈ヤングアダルト〉? ニューシネマの裏で生まれていたインディペンデントの奇形児は、YouTube慣れした我々にも衝撃をもたらす閲覧注意動画だ。この傑作を未見のまま映画(史)を語っていたなんて、恥ずかしすぎる!
                 森直人(映画評論家)
いざ戦争が始まると、人を殺したくないからと徴兵を拒む若者に対して国家はどう対応するのか。なぜかフィクションと捉えきれない真のホラー。今のこの国でこそこれを見て、大いに今後のことを話し合いたい。
                 ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
露骨なまでの反権力性。そしてそれを本気でつぶしにくる、体制側の圧力の対比。しかし現代日本は、まさにここへ立ち返ってしまった……! 本作のモキュメンタリーとしての手法はいまだ最先端だ。特に批判対象として描いたはずの、「戦争賛成!若者にはしつけが必要だ!」と口にする体制側のモンスターぶりが、各人とも個性豊かすぎて思わず見入ってしまう。砂漠映画にハズレなし!
                 真魚八重子(映画評論家)
スチューデント・パワー華やかなりし1971年に開園した砂と灼熱の太陽しかない麗しのテーマパーク「懲罰公園」でどこまでも歩き続ける熱射病地獄、それはあなたにも待っている運命かも知れない!
                 柳下毅一郎
反体制を許さない権力を描くのならばドキュメンタリーでも撮ることは出来た。しかし現実の一歩先を想像させることで、時代性を超えた普遍的な物語へと進化した。本作にはフェイクドキュメンタリーとして作るべき必然性がある。
                 松江哲明(ドキュメンタリー監督)
観る者に動揺を促す映画のお手本。 そのエネルギーと、訴えようとするパワーを微塵も失っていない。
                 Premiere magazine
PUNISHMENT PARKはそれが訴えようとしているもの全てである。 不穏で、間違いなく強力だ。
                 Santa Barbara International
ピーター・ワトキンスは素晴らし過ぎて、もっと知られるべき監督だ。 このバカバカしくも地球を揺るがす書状は彼の最上級の仕事である。
                 The Telegraph(UK)
アメリカへの異議を唱えた映画の最高峰
                 Rolling Stone magazine
ワトキンスの視点による分極化されたアメリカは極端で大げさだが、今でも通用する内容だ。
                 Boston Phoenix
★★★★非常に魅惑的で、凄まじくショッキングな、忌々しいほどに計算された映画制作。
                 Time Out (London)
1971年/アメリカ映画/スタンダードサイズ/カラー/88分/原題:PUNISHMENT PARK(お仕置き公園)
©1971 francoise films ltd. all rights reserved.
提供・配給:キングレコード/宣伝:ビーズインターナショナル/配給協力:アーク・フィルムズ